:::2004.11.04号より:::
 1995年から2002年8月まで、芝居やコンサートなどで活用されていたJR琴似駅前劇場「コンカリーニョ」。地域の再開発にともない取り壊された劇場をもう一度再建し、人、まち、アートをむすぶ橋渡しをしようと活動しているのが、「NPO法人コンカリーニョ」です。2006年の劇場再建を目指して東奔西走する理事長の斎藤ちずさんに話を聞きました。(八島美穂)
もう一度あの場所に劇場を作ろう!
仲間と語り合う斎藤ちずさん
今後の活動について仲間と語り合う斎藤ちずさん(中央)
総会風景
役員や会員が集まって話し合われた総会風景。さまざまなメンバーが得意分野で協力し合っています
 斎藤ちずさんは学生時代から演劇研究会の一員として舞台に関わってきました。かつては役者として、現在も演出家、プロデューサーとして舞台芸術とつながっています。斎藤さんがコンカリーニョと出合ったのは16年ほど前、劇団の公演場所を探している時でした。「当初は日食倉庫と呼ばれていたんです。札幌軟石を使った古くて独特の雰囲気がある建物で、すぐに好きになりました」。以降、役者として何度も劇場の舞台を踏み、95年からはスタッフとして運営に携わってきました。
 「古い建物なので以前から立ち退きのうわさは出ていましたが、2000年末に本格的な話が出てからは、どうしていいかわからずに泣き暮らしていました」。
 地元はもとより、全国の劇団やダンサーらが舞台活動をしてきた劇場を、地域の人たちが気軽にアートと触れ合える場をなくしていいのか…。6人の運営スタッフや、劇場を取り巻く仲間たちと悩んだ結果、「もう一度劇場を作ろう」と動き出したのです。こうして舞台を使ってきた人、見てきた人の思いが一つになり、2002年冬に再生委員会が発足。準備を重ね昨年9月にNPO法人に認証されました。
多くの人が関わる劇場づくりを
「街角突然セミナー」
企画した舞台の一つ、劇団RUSH!!「街角突然セミナー」(撮影/笹明美さん)
 現在は12人の役員と、正会員・サポート会員を含む270人以上が再建活動を行っています。会員は年会費を納めて企画や運営を手伝う仲間たち。よく金は出すが口は出さない人がいいと言われますが、ここではその逆。会員にもどんどん意見を言ってほしいと、斎藤さんは言います。「自分の言ったことは気に留めるでしょ。意見を言い、責任をもって劇場と関わってほしいんです」。
 こうして、オペラの演出家や建築関係者、琴似の商店街の人々、OL、学生など、さまざまな仲間が集まりました。役員の一人、原みちるさんは琴似にある寿司店のおかみさんです。「二十年間、自宅のある小樽から琴似に通っています。コンカリーニョで芝居を見て面白かったし、若い人たちが町づくりのために一生懸命な姿を見て手伝いたいと思っ たんですよ」と、琴似を知るための一環として参加しています。
 事務局長の佐藤ゆみ子さんは、観客代表として「見る側が行きやすくて見やすいスペースが増えたらいいなと思う。自分たちも声を出して参加できるのが魅力」と張り切っています。
目標5000万円!
第一の目標は2006年の劇場再建
劇場の完成予想図
劇場の完成予想図。250席のオープンスペースになる予定(イメージイラスト)
 「NPO法人コンカリーニョ」が劇場再建を考えているのは、以前と同じ西区八軒1条西1丁目。都市再開発計画の地域づくりのためにと劇場再建を提案し ています。
 「どうやって提案したらいいのかなどわからないことづくめ。法律上の問題もありいろいろと勉強をしました」と斎藤さん。慣れない作業も、多くの賛同者の協力で一つずつ形になっている最中です。
 とはいえ、許可がおりたとしても劇場自体の再建費用は自分たちの手にかかっています。目標とする5000万円をどう調達するか。目下の悩みはそれにつきます。
 「まだまだ目標金額の10分の1くらいですが、絶対に実現したい。私たちの活動で再建できれば、人の意識や、文化を取り巻く環境が変わるはず。行政に作ってほしいと言うんじゃなく、こういう活動をしたいから手伝ってほしいという関係で、まちも人もうまくつながっていけると思うんです」と熱い思いであふれています。
文化芸術のデパートのような
存在を目指して
「水と油」
東京から招いた「水と油」公演(撮影・高橋克己)
 劇場再建だけがコンカリーニョの目的ではありません。劇場を拠点に芸術文化を育て発信していくことこそが本来の目的。それを知ってもらうためにと、舞台やイベントなどの企画・運営を精力的に行っています。
 その内容はアート関係者などを招いてのトークショーをはじめ、芝居やダンスの公演、各種イベントへの出前パフォーマンスなど多岐にわたっています。本拠地となる琴似では、「琴似あーとdeバザール本通り」を企画し、商店街感謝祭りに参加。昨年は一参加者だったものが、今年は企画・運営を依頼されて盛り上げるなど、地域に根ざした活動が評価されています。さらに今春からは、地下鉄琴似駅直結の「ターミナルプラザことにパトス」の管理・運営もまかされ、足がかりとなる活動を続けています。
 「どういう集まりかを知らせながら、私たちが思い描く劇場再建を目指したい。まだできてもいないのに、こけら落としをしたいという集団がいくつも集まってるんですよ。あそこにいけば札幌の文化芸術のことがわかるというような場を作って、人と人、人とアート、そしてまちをつなげていきたいですね」。
 表現する側も見る側も生き生きと楽しめる空間を夢見て奔走するスタッフたち。資金集めという大きな壁を乗り越えて、みんなが求める劇場が再建されることを祈らずにはいられませんね。
●NPO法人コンカリーニョ 札幌市西区琴似1―4―2―12
011・615・4859 http://www.concarino.or.jp
※会員と同時に劇場再建の協力金(個人1口1万円〜)も随時受け付け中