:::2004.06.16号より:::
北村 一輝さん
撮影/須藤淳司
北村 一輝さん
北海道の寒さは想像を絶するものが。でもその状況を味わえた分、空気感が画に出てると思います。

 大ヒット時代劇「大奥」での顔にアザのある将軍、徳川家定役。「あなたの隣に誰かいる」では、かなり怖いストーカー役で強い印象を残した俳優、北村一輝さん。TVドラマで強い存在感を見せる一方、昨年は「あずみ」、今年は行定勲監督の「きょうのできごと」など、映画の分野でも多様な役柄をこなせる演技派として、注目を集めています。
 主演最新作「新しい風」は、帯広など北海道でロケ撮影されており、札幌劇場で現在、北海道先行ロードショー中です。主人公は、今から120年ほど前、北海道十勝野の開拓に挑んだ男、依田勉三。現在の十勝農業の発展の基盤を築いた実在の人物の、青春群像が描かれています。
 自分の信じた道を突き進む勉三を演じた北村さん。「正直、当初依田勉三のことは知らなかったんです。映画のお話をいただいてから、いろいろ資料や原作も読みました。彼の生き方、考え方は、極論の域に達してますね。でも演じていて、偉人というのはやはりそういう部分も必要なんだと感じました」。
 明治15年、武士の世は終わり、心機一転を志す勉三は故郷の伊豆を出て、北の広大な農地を開墾しようと「晩成社」を結成。30余名の開拓団を率いて出発しますが、その現実はあまりにも厳しく、苦悩の道だったのです。
 「台本があっても架空の話ではないので、依田勉三という人間がどういうふうに映るのか、彼のどういう部分を出し、この映画で何を伝えるかというのをその場その場で考えながら演じていきました。実際、セリフを小学生、中学生にも分かりやすい言葉に直したり、いろいろな言葉遣いを考えたり。僕なりに一生懸命演じたつもりです」。
 昨年9月、十勝の大樹町にオープンセットを建て、撮影をスタート。例年にない長雨や十勝沖地震、夜の冷え込みなど、当時の晩成社の苦労を追体験するような現場だったとか。「キツかったのは、水を畑へ夜な夜な運ぶシーン。なかなかOKが出なくて(笑)。北海道の寒さは覚悟していたんですが、想像を絶するものがありました。でも、そういう状態だったから役に入りやすかった部分も。その状況を味わえた分、それが画に出てると思います。現場では地元で協力してくださった方々が、精神的に疲れている時にのんびりとお話してくれたりして、それが一番安心できた時間でした。ホント、うれしかったですよ」。
 困難を要する農作物の栽培や先住者アイヌの人々との確執、仲間たちとのぶつかり合い。時を超えても伝え続けたい北の大地の雄大さと人間味、魂の鼓動を今、ぜひ体感して。
新しい風 若き日の依田勉三 映画「新しい風 若き日の依田勉三」
(監督・脚本/松島哲也、出演/北村一輝、富田靖子、風間トオル、配給/松竹)
 勉三は、農地の開墾を目的とした会社を結成し、故郷の伊豆を捨てる決意をする。が、未知の荒野、北海道に向かう勉三たちを待ち受けていたのは、凍てつく寒さや作物を食い散らすバッタの大群など、多くの困難であった…。
きたむら かずき
1969年、大阪生まれ。主な映画出演作は、1997 年 の「鬼火」(望月六郎監督)、「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」(三池崇史監督)、2000年の「弱虫 チンピラ」など。鈴井貴之監督の北海道作品「man-hole」(2001年)にも出演している。
(深田敦子)