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| 撮影/須藤淳司 |
特別難しい役だと思わず、むしろ楽しもうと思って演じました。こういう役、なかなかできないですからね。(堤)
暑気にさらされた脳裏に、ひんやりとした邪気が漂う映像とミステリアスな風を注ぎたい真夏。この時期にぴったりの映画が、現在公開中の「姑獲鳥(うぶめ)の夏」です。原作は、北海道出身の直木賞作家・京極夏彦さんの同名小説。タイトルの姑獲鳥とは、子どもを抱いてくれと頼む女の化け物のこと。一方、中国では「こかくちょう」と読み、鳥に化けて赤ん坊をさらう女を意味します。日本と中国とでは正反対の妖怪が、どのような結末をもたらすのでしょうか…。
舞台は昭和27年、夏の東京。ある奇怪なうわさが世間を騒がせます。ある大病院の娘・梗子(原田知世)が、妊娠20カ月を迎えても出産する気配がないというのです。しかも彼女の夫は1年半前に医院の密室からこつ然と姿を消し、行方不明に…。ち密に積み上げられたエピソードの数々から結末に至るまでの巧妙な展開、その独特な世界観と登場人物たちの魅力にぐいぐい引きつけられます。
その謎を解く人物として登場するのが、古本屋の店主にして神社の神主、そして“憑物(つきもの)落とし”という3つの顔を持つ「京極堂」こと中禅寺秋彦。主演は、この夏は立て続けに映画出演作が公開中の堤真一さん。あらゆる知識を身に付けた京極堂をクールに演じています。「京極堂という役に対しては、特別難しい役だと思わず、むしろ楽しもうと思って演じました。こういう役、なかなかできないですからね。もちろん緊張もしましたけれど、あまり大変だったという記憶がない。何しろ現場が楽しかったんですよ。だからいい時間が過ごせたという思いがすごく強い作品ですね」。京極堂の巧みな弁舌には、見る側も論破されるほど。理詰めなセリフ回しにうならされます。
また、物語のカギを握る人物として目が離せないのは、梗子とその姉・涼子。何とその二役に挑んだ原田知世さんは、「京極さんの原作自体、個性の強いキャラクター一人ひとりのエピソードがしっかり書かれていたので、そういう人たちが出てくるストーリーに自分が参加するっていうのがすごく面白そうだなって思いました。役に関しては、ほかの方と実際にお芝居をしていくうちに自分の役柄が何となく見えてきて。皆さん本番のときにはグッと集中するんですけど、それ以外はぱっと楽しい雰囲気に切り替わる人たちばかりで、現場は本当に楽しかったです。その雰囲気に随分救われました」。
田中麗奈さんは、雑誌の編集者で京極堂の妹・敦子役で登場します。事件の真相をつかもうとする元気な女性を好演。チェック柄のハンチング帽とパンツ姿が印象的
です。「あの衣装を身にまとうのは、私もすごく楽しかった! 快活で知的好奇心が旺盛とか、兄と違って健康的だとか、脚本に敦子の性格がはっきり書かれていたんですね。演じるうえで私もすごく分かりやすかったし、想像もしやすかったので、その敦子をそのまま出せればと思って演じました」。
京極堂のキメゼリフ、「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」。“姑獲鳥”の謎と怪奇、魅力あふれる登場人物たちによる異質な空気感に魅了されるはず。この夏はミステリーで涼むべし。 |