
:::2007.05.16号より:::
撮影/久保ヒデキ
徳重聡
今ある平和は、愛する人を守るために戦った若者たちがいたから。その事実を知ってほしい
太平洋戦争末期、不利な戦況下にあった日本軍は、爆弾を搭載した戦闘機を敵艦へ突撃させる特別攻撃隊を編成。多くの若者たちが特別攻撃隊員として出撃し、命を落としました。
公開中の映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」は、"特攻の母"と呼ばれた鳥濱トメさんの視点で、若き特攻隊員たちの姿が描かれています。舞台は、特攻基地があった鹿児島県の知覧という町。そこで食堂を営んでいた鳥濱さんは、特攻隊員たちに慕われた実在の女性です。
同作の中で、陸軍少尉の中西を演じた徳重聡さん。自身の役について、「中西は陸軍士官学校を卒業した当時のエリート。心の中で、日本はこの戦争に負けると感じながらも、立場的に部下を特攻隊員として送り出さなければならない。部下の大切な命を失うことへの苦しみや悲しみを胸の内に秘めながら、自らも出撃する。難しい役どころでしたね」と話します。
作品で描かれているのは、史実に基づいたもの。撮影前、製作総指揮の石原慎太郎さんからは、「とにかく特攻兵に近づくんだ。ハートを近づけろ」と言われたそう。撮影現場では、実際に陸軍隊員だった人たちが立ち合い、細かい動作などを指導。「当時の話をたくさん聞かせてもらいました。特に、気持ちの部分を何度も聞きましたね。極限状態の中で死を覚悟するというのは、それを経験した人にしか分からない。でも、できるだけその気持ちに近づこうとしました」。
作品の核となる鳥濱さんは既に亡くなっていますが、彼女について、「石原さんは菩薩(ぼさつ)のような人と言っていますが、まさにその通りの人。あの時代に、彼女が知覧にいてよかった。トメさんがいたから、特攻隊員たちも救われた部分があったと思います。出来上がった作品を見て、改めてそう感じました」と言います。
CGと特撮を駆使した戦闘シーンは、見ているほうも恐怖を感じるほどの迫力。「演じていた時の想像をはるかに超えた仕上がりになっていました。でも、決して大げさに描かれているのではなく、これが事実だと思う」。
一つひとつ、丁寧に言葉を選びながら話す徳重さん。「戦争時に起こった事実を知ってほしい」。そんな言葉が何度か出てきました。「特攻の人たちが、出撃前に撮った写真を見たことはありますか? 彼らの目はすがすがしくて、澄んでいるんです。初めは、どうしてそんな目でいられるのかが理解できなかったのですが、この作品を通して、その理由が分かりました。愛する人を守りたいという強い思いがあったからなんですよね。今ある平和は、あの時代があったから。愛する人のために戦い、亡くなった若者がいるという事実を知り、受け止め、それを未来へ伝えていくことが大事だと思います」。同作は、語り部のように次世代へ"戦争"を語り継ぐという、大きな役割を担っているのかもしれません。
(中村昭子)
映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」(配給/東映)
©
2007「俺は君のためにこそ死ににいく」製作委員会
太平洋戦争末期、軍指定の食堂を営む鳥濱トメは、出撃する特攻兵たちを見守るしかできませんでした…。
(製作総指揮・脚本/石原慎太郎、監督/新城卓、出演/徳重聡、窪塚洋介、筒井道隆、岸惠子ほか)
※札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、札幌劇場ほかで公開中

とくしげ さとし
1978年静岡県出身。2000年“21世紀の裕次郎を探せ!”でグランプリに輝く。主な出演作に、映画「レディ・ジョーカー」(2004年)、ドラマ「弟」(2004年)、ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」(2006年〜)、ドラマ「マグロ」(2007年)、ドラマ「グッジョブ」(2007年)など。
