:::2008.08.20号より:::

男鹿和雄

トトロに出てくる台所は、わが家がもと。故郷には、丁寧に絵にしたくなる風景がたくさんありましたね

おがかずお
1952年、秋田県生まれ。「ど根性ガエル」や劇場版「エースをねらえ!」といった70〜80年代を代表するアニメーションの背景美術を手掛ける。宮崎駿監督との初仕事となった「となりのトトロ」では美術監督を担当し、以降、ほとんどのスタジオジブリの作品に携わる。現在は挿絵や絵本など、さまざま分野で幅広く活躍中。

 映画「となりのトトロ」に出てくる豊かな自然があふれる日本の原風景。あの場所に行きたい! と心を揺さぶられたのは、子ども以上に大人が多かったのではないでしょうか。その風景を描き出したのが、同作品の美術監督を務めた男鹿和雄さんです。現在、札幌芸術の森美術館で開催中の展覧会「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」のため、来札した男鹿さんに話を聞きました。
  「となりのトトロ」の舞台は昭和30年代の東京周辺。背景を描くにあたり、秋田で過ごした経験が大いに生かされたとか。「小さい頃、遊びといえば山や川ばかり。歩く道や石ころが漠然と頭に残っていて、丁寧に絵にしたくなるような良いものがたくさんありましたね。うちの台所は、まさにあんな感じだったんです。絵と同じ位置にポンプの井戸があって」。また、同じく美術監督を務めた映画"平成狸合戦ぽんぽこ"は、自身の子どもと遊んだ東京の自宅の裏山がモデルだったこともあり、「散歩しながら取材するなど、楽しんで仕事をさせてもらいました。四季間の微妙な時季のシーンも多く、背景を描くことの楽しさとしては、一番思い入れのある作品です」とのこと。背景を描く際は、モデルとなる土地へ出向くことが多く、「歩き回って、その場の空気や空間などを肌で感じて確かめる」と、五感すべてで受け止めたことが、独特の世界観につながっているようです。
  今回は、アニメーション作品の背景美術の方向性を決めるために描かれた美術ボードと呼ばれる絵も展示され、初の一般公開となるものがほとんど。アニメーション背景のほか、吉永小百合さんによる原爆詩の朗読会「第二楽章」の挿絵もあり、丁寧に描かれた景色から、自然への愛情や尊敬が感じられます。
  最後に「足もとの草花とか平凡な風景など、普段は目のいかないような所も、ある程度きちんと描いているので、見に来てもらえるとうれしいですね」と、メッセージを寄せてくれました。絵を通して改めて気付かされる自然や日常の美しさ。ぜひ、大切な人と一緒にゆったりと見てほしい展覧会です。

(近藤志麻)

「となりのトトロ」背景画(1988年)
©1988二馬力・G
「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」は9月15日(月・祝)まで、札幌芸術の森美術館で開催中