:::2008.03.05号より:::

送別会や花束も餞別の一つです。形よりも心を大切に
お世話になった気持ちを込める「餞別(せんべつ)」
転勤や退職、卒入学、引っ越しなどが多く、出会いと別れの季節でもある春。特に「別れ」の3月は、「餞別(せんべつ)」を渡す機会も多いはず。そこで餞別の由来や喜ばれる贈り方、感謝の気持ちの伝え方などを、ビジネスマナーの専門家・井島惠子さんに聞きました。
餞(はなむけ)の由来は、旅の安全祈願の「馬の鼻向け」から
引っ越しや転勤などで長く会えなくなる知人や、長期の旅行などに出掛ける人に渡す「餞別」。遠い地に赴く人に向け「新しい環境で頑張って」「お世話になりました」という気持ちを込めて渡すものです。
普段あまり使うことのない「餞(銭は誤用)」の字は、「はなむけ」と読むこともできます。これは旅立ちの方向に馬の鼻を向けて見送り、旅の安全を祈願したことに由来するそう。道路や交通機関が未発達だった時代は、旅をするのも命懸け。そこで周囲の人は物品や金銭を贈ったり、安全を祈願してうたげを催すことがあったそう。
旅立つ人への安全や健闘を祈り、昔から脈々と受け継がれているのが「餞別」なのです。
見送り、無事を祈る気持ちが一番大切
喜ばれる餞別とはどのようなものでしょう。「場面や年齢を問わず、やはり現金が一般的です」と話すのは、ビジネスマナー教室などを手掛ける「ブロッサム」代表取締役の井島惠子さん。「引っ越しなら物入りになりますし、荷物にもなりません」。物品ならば、生活に必要な消耗品が適しています。金額は北海道の場合、3000円から5000円程度が“相場価格”。ただし付き合いの深さにより、増減してもいいでしょう。
家を新築して引っ越したり、入学や就職、結婚退職など、慶事で旅立つ人へは、名目を「餞別」よりも「お祝い」とする場合もあります。
また、事情のある退職や定年で職場を離れるなど、必ずしも慶事ではない場合は、職場の数人(営業部一同など)の連名でまとまった金額や、「記念品」として物品を渡す方法もあります。「定年退職される方へは『これを見て私たちを思い出してください』という気持ちで、記念品を渡すのもいいですね。しかし好みがあるので、本人の希望を聞くなど、付き合いの度合いによって考えましょう」(井島さん)。
長年社会生活を送っていても、「今まで一度も餞別の文字を書いたことがない」という人も意外と多いはず。しかし井島さんは「送別会に参加したり、花束や記念品を買ったことはありますよね。修学旅行に出掛ける近所の子どもにティッシュに包んだお小遣いを渡すことだって、“見送る気持ち”が込められた、立派な餞別になるんです」。そう考えると、私たちもずいぶん多くの餞別を贈り、贈られてきたことが分かります。
さらに井島さんは「のし袋に“気を付けてね”“お元気で”など、直筆のメッセージを入れると、より気持ちが伝わりやすくなりますよ」とアイデアを教えてくれました。
形にこだわる必要はありません。餞別に一番大切なのは、その人を見送り、無事を祈る気持ちなのです。
基本的にお返しは不要。お礼状で心は伝わります
何かをもらったときは、気になるのがお返しですが「餞別は基本的にお返し不要と言われています。転勤の多い職場では贈ったり贈られたりでしょうし、引っ越しは物入りですから“相互扶助”という側面もあるはず。それでもどうしてもお返ししたいなら、半額程度の消耗品(洗剤やお菓子など)を贈るといいでしょう」(井島さん)。
心が込められた餞別には、心でお返しするのがベター。井島さんは「引っ越しなら新生活が落ち着いてから近況報告を兼ねたお礼状、旅行なら旅先から現地の絵はがきを出すことをお勧めします。ただしお礼状を出すならば、餞別を贈ってくれた全員に出さなければ、礼を失するので気を付けて」とアドバイス。贈り主が連名ならば、あて名は「○○部ご一同様」でも構わないそうです。
「堅苦しく考えず、はがき一枚で気持ちは伝わるものですよ」と井島さん。餞別は人と人との気持ちのつながりを表現するツールとして、受け継がれてきたものなのかもしれませんね。
取材協力/トータルイメージコンサルティング「ブロッサム」(札幌市中央区南4東1 フォーシーンビル9階、TEL.011・261・8055)